TOP >農工大TLOの歴史

 
 農工大ティー・エル・オー株式会社の設立

 国内で産学連携活動が急速に進展するなか、東京農工大学においても教職員や卒業生ら522人の出資により、農工大ティー・エル・オー株式会社(農工大TLO)が平成13年10月1日に設立されました。資本金は8,000万円です。

 技術移転機関(TLO)とは、大学が持つ研究成果を特許などの形で権利化し、産業界に移転する組織です。米国で先行したシステムで国内でも平成10年に「大学等技術移転促進法」が施行され、以降、旧帝大や有力私立大を中心にTLOの設立が各地で相次ぎました。
 農工大では、産官学連携推進委員会(松永是委員長、当時)を中心に2年あまり議論が重ねられました。具体的には同委員会の下にTLOワーキンググループ(亀山秀雄委員長)を設置し、平成12年12月に「農工大TLO構想」をまとめました。
 中規模国立大学としての特徴を生かし、いかに安定した経営をするかについて検討した結果、共同研究開発センターとの密接な連携、社長公募、大学関係者に広く株主を募るなどのユニークな方式が多数採用されました。
 
 設立総会と役員
 産官学連携推進委員会は、公募により社長候補として元日本経済新聞社記者の伊藤伸を選任しました。梶井功農工大前学長と伊藤が発起人となり、平成13年9月に創立総会を開催しました。
 
 会社設立時の役員には、梶井前学長が会長、伊藤が代表取締役社長、前田裕子デンセイ・ラムダ経営企画室課長が取締役副社長、川口竜二エスアールエルゲノム研究開発室長と益子堯ダイキン空調東京営業開発部長が取締役、浅井美博博進企画印刷代表取締役が監査役に就任しました。常勤は伊藤のみで、兼務の非常勤役員も公募による選任です。設立に先立ち、平成13年6月に伊藤氏ら5人の役員は共同研究開発センターの客員教授、助教授に就任しました。
 翌年7月には、文部科学省による兼業許可を得て、西脇信彦工学部機械システム工学科教授が副会長、澁澤栄農学部地域生態システム学科教授、亀山秀雄 工学部化学システム工学科教授、堤正臣大学院生物システム応用科学研究科教授、 中川正樹工学部情報コミュニケーション工学科教授・前共同研究開発センター長が取締役に加わりました。
 平成15年6月には中川取締役が退任し、代わって矢ヶ崎一三農学部応用生物科学科教授・共同研究開発センター長が取締役に就任しました。

 24番目のTLO

 文部科学省、経済産業省は大学等技術移転促進法に基づいてTLOを承認しています。農工大TLOも実施計画について両省と調整を重ね、設立から2ヶ月余り後の平成13年12月10日に24番目の承認を受けました。


  承認TLOは、経費補助等の支援策を受けられ、国立大学内施設を無償使用できます。これに基づき、農工大TLOはオフィスを共同研究開発センター内に開設しました。なお、全国の承認TLOは平成18年1月時点で41に達しています。
 
 ライセンス第一号

 平成13年12月には早くも技術移転契約第1号が成立しました。亀山秀雄教授と荏原製作所の共同出願特許「触媒構造体、及びそれを用いたガス燃焼分解装置」を買い取り、環境触媒のエンジニアリング事業を行っているアルキャットに対して、独占的にライセンス(実施許諾)する契約を締結しました。同社はこの技術を利用し、工場などで排出されるVOC(揮発性有機化合物)分解装置の製品化に取り組んでいます。

 その後、順調にライセンス活動が進み、平成17年12月時点で、すでに30件の技術移転契約が成立しており、大半に企業からのロイヤリティー(実施料収入)が発生しています。立ち上げ直後のTLOは特許出願費用が先行するため収益的に厳しい場合も多いのですが、農工大TLOは教官がすでに保有している特許やノウハウ等を技術移転することで、設立初年度(6ヶ月決算)から税引き後利益が307万円と黒字を実現しました。

 北九州TLOとの連携
 九州工業大学が連携している北九州TLO(北九州産業学術推進機構)とは平成14年5月に提携しました。技術情報の交換などを進めており、TLO間の交流は強まる流れにあります。
 
 スタッフ

 平成14年7月に経理・労務担当として永井信子アソシエイトが、翌年1月に特許担当として峯ア隆司シニアアソシエイト、10月には技術移転業務担当として木下豊アソシエイトが加わりました。インターンシップ(学生の就業体験)など新規軸も取り入れ、パートも含めスタッフは7人に達しました。

 産官学連携・知的財産センターのスタッフとは密接に連携しており、特に展示会の参加には一体となって取り組んでいます。

 
 マーケティング

 以下のマッチングファンド予算もあり、平成15年3月末までに21件(PCT出願1件を含む)の特許出願をしました。

 
  農工大の法人化前は、教員から発明の出願依頼を受けると原則月1回開催の取締役会で検討し、了承を得れば、農工大TLOが発明を譲り受けて特許出願していました。農工大の法人化後は、農工大が出願した特許をマーケティングの主な対象としています。

 具体的には、特許出願を利用しそうな企業を様々な手法を用いて探索します。興味を持った企業とは、秘密保持契約を締結し、詳細情報の開示から技術移転契約の締結と交渉を進めます。特許出願は当初、年20件から25件程度を想定していました。

 
 配分ルール
 ロイヤリティーは、配分ルールによって必要経費を控除した後、発明者の教官に3割、発明者の研究室に2割、農工大本体に2割、農工大TLOに3割を配分します。教官が株主の場合は4割(農工大TLOが2割)となります。
 

  研究室と農工大本体へは奨学寄付金の形で配分しており、農工大TLOからの奨学寄付金は累積で7,035,088円(平成17年12月末時点)に達しています。
 
 公募型共同研究マネジメント
 農工大は企業との共同研究が従来から活発であるため、公募型共同研究をマネジメントする形態での技術移転にも積極的に取り組んでいます。平成15年度の農工大と農工大TLOの共同研究(区分A)件数は14件でした。
 
  平成13年度補正予算の即効型地域新生コンソーシアム研究開発事業1件の管理法人に加え、代表格としては、経済産業省の大学発事業創出実用化研究開発事業(マッチングファンド)があります。平成14年度は全国TLOで最多の6件を実行しました。企業が提供する資金の2倍の資金を国が補助し、TLOがプロジェクト全体を取りまとめ、共同研究の成果はTLOが特許出願し、資金提供企業に独占的に実施許諾する仕組みです。企業の提供資金と補助金を受け、平成14年度は農工大へ総額1億4,435万円の共同研究費を納入しました。
 希望する教員は多く、平成15年度も14件のマッチングファンドを実行しました。
 
 大学発ベンチャー支援事業
 農工大の研究成果を活用したベンチャー企業の支援も推進しています。中心は発明協会の制度を利用した公認会計士や弁理士など専門家の派遣で、平成15年6月に開設した学内インキュベーション施設の入居企業などを主な支援対象としています。

 松田浩珍農学部獣医学科教授の技術を活用したノベルテックのように会社設立段階から支援した例もあります。
 また、農工大発ベンチャーの株式取得も視野に入れているほか、文部科学省の大学等発ベンチャー創出支援制度に採択された教官に対してもコンサルティング業務を実施しています。一段と具体的なマーケティング調査、特許調査、ビジネスプラン作成支援等を実行します。
 
 会員制度
 設立時より農工大TLO企業会員を募っています。入会は順調に進み、当初目標の20社を大きく超え、平成15年度末の会員は35社に達しました。

 年会費は大企業20万円、中小企業10万円で、現在の会員企業は約30社です。会員企業へは1ヶ月間、特許出願情報を優先的に開示するほか、高度技術研修やセミナーの料金割引、農工大の研究情報の提供などを進めています。技術研修については化学プロセス関連などの実績があります。
 
 農工大ティー・エル・オーの未来
 農工大単独でTLOを設立した結果、迅速な経営判断が可能となるなど効果を上げており、2年目となる平成15年3月期決算は、約3億5,000万円の収入が発生し、利益も大幅に増加しました。
  平成15年7月にはTLOとして異例の配当金も実施しました。


 平成15年度の大学知的財産本部整備事業に農工大は採択されました。平成16年4月の国立大学の法人化とあわせて、農工大TLOをめぐる環境は大きく変化しましたが、大学とTLOの関係が1対1と明確であり、農工大の知的創造サイクルとともに農工大TLOは発展していくものと考えます。

*肩書き、名称は当時のものです。
 
 

Copyright(c) TUAT-TLO.CO.,Ltd.